形だけの安全対策

先週、取引先の準大手建設会社の現場で死亡事故(建設資材搬入時の事故)が起き、
警察や労働基準局などの監査が入り、かなり大変な事になっている。
我が親会社にも、安全対策の強化などの対策を、建設会社から言って来るのは必至であろう。


最近の建築現場では、労働基準局の査察が低層住宅にも力を入れるようになった事もあり、
労働災害の撲滅のための安全対策を強化している。

安全対策の内容は、労災加入の徹底・職長教育・各種作業資格の確認・作業手順書の携帯、遵守・
現場でのTBM及びKY活動・作業後の報告・・・など、そのほかにも多岐にわたっている。


しかし、これらの対策を行っていても、実際には事故は全然減っていない。
表向きの数字は、減っているのかもしれないが・・・

なぜ、事故が減らないか? 今の安全対策が労働基準局などの査察が入った時のための、
表向きの準備であって、本当に事故を減らすための作業現場作りは行っていないからである。
TBM やKYにしても、現場監督や作業責任者が率先して行わなければならないのに、
作業者にそれらしい事をただ書かせているだけ、と言うのが現実である。




売り上げ優先で、短期間の無理のある作業日程で工事を行うために、一つの現場に同時に
多数の業者が入るので、如何しても急いだ工事になってしまう。
また、作業単価も下げられているので、他の職種の事まで考えずに作業を進める作業者もいる。
この作業環境で、事故を減らせと言うのは無理であろう。



それと、下職が事故を起こした時に、労災を使いづらい(使えない!)環境がある。

数年前に、死亡事故と多数の労災請求が発生したために、労働基準局の臨検対象になった、
大手ハウスメーカーが、我々のような一人親方にも労災への加入を義務付け、書類の提出を求めた。
労災に加入していない職人には、仕事を出さないと言ううことである。

しかし、表向きの会議などでは、そのハウスメーカーの責任者は
「事故が起きたら直ぐ報告。労災隠しはしないように!」と、強く行っているのだが、
裏で、我々個人事業者には、”事故が起きても弊社には労災請求をしない事”と言う
内容の念書を送り、サインさせているのである(配偶者のサインも!)。
念書を書かなければ、仕事は出さないと言っているのである。
我が親会社も、見て見ぬ不利である。


個人事業者が多い建設業は、労災を使うと仕事が回って来なくなってしまう。
だから、ケガをしても労災請求をしない人が多いのである。




ゼネコンやハウスメーカーが、自社を護るためだけの表向きの安全対策をしている限り
建設災害事故は減らないのではないだろうか。
工事のし易い環境作りこそが、事故を減らす第一歩だと思うが・・・